エンジンオイルとは??

エンジンオイルは、エンジン内部の潤滑を目的とした潤滑油です。現在のエンジン(内燃機関)を正常に動作するには欠く事ができない重要な構成要素となります。

エンジンオイルの役割(基本的な性能)

1. 潤滑性能

シリンダー内部を高速で機動するピストンと内壁部の金属接触を油膜により防止・潤滑するエンジンオイルの最も基本的な性能です。

2. 密閉性

ピストンとピストンリングの隙間を油膜が埋めることにより、エネルギー効率を高め、ガスの吹き抜けを防止します。

3. 冷却性能

シリンダー内部を高速で機動するピストンと内壁部の金属接触を油膜により防止・潤滑するエンジンオイルの最も基本的な性能です。

4. 清浄分散性能

カーボンやスラッジ等のエンジン内部の汚染物質を分散しフィルターにより濾過する事により、エンジン内部への汚れの固着を防止し清浄に保つ性能です。

5. 防錆性能

金属表面へ付着し、水分や酸素、有毒ガスなどとの直接の接触を防止する事により錆の発生を防止します。

6. 応力分散性能

潤滑部局部に掛かる応力を受け止め衝撃を吸収して力を分散させる。

7. 酸中和性能

燃焼に於いて発生する酸化ガスを中和して腐食を防止します。

8. 酸化防止和性能

過酷な条件下に於いて使用される為に熱や大気によるオイルの酸化劣化を防止する性能です。

※1~6はエンジンオイルに潤滑油として求められる性能で、7~8はエンジンオイルのオイルとしての性能です。

エンジンオイルの製品表示と規格

1. SAE粘度表示

米国自動車協会(Society of Automotive Engineers, Inc.)が制定したオイルの粘度分類に基づく粘度表記です。
5W-20、10W-30などと表示し、Wは低温時の粘度を表します。(WはWinterを表す)この値より、どの程度の外気温で使用できるかが判断できます。数字が小さいほど軟らかいオイルで、始動性が高いオイルとなります。
W-の後に記載される20や30などの数字は、高温時の粘度を表し、数字が大きいほど高温時の粘度が高く油膜が切れにくいため、ターボや高回転運転をされるのに最適です。近年は省燃費性が重要になり、低粘度オイルの需要も増えてきています。

2. API規格表示

API(American Petroleum institute)の分類に基づく規格表示で2番目のアルファベットが大きくなるにつれて品質が良くなります。最新のSP規格では、新規追加試験とより厳しい規格化により、SN規格より下記のような点で性能向上が見込まれます。

酸化安定性
高温時の酸化安定性が向上し、より長い期間エンジンオイルの劣化を防ぎます。
摩耗防止
エンジン部品の摩耗防止性能が向上し、エンジン部品の保護性能が向上しました。
LSPI防止
・低速(Low Speed)で発生する早期着火(Pre-Ignition)を防止します。
・LSPIは主に直噴ターボ車に発生し、ノッキングやひどい場合はピストンに損傷を与えてしまいます。
チェーン摩耗防止
・タイミングチェーンの摩耗(伸び)を防ぎます。
・伸びが発生すると、バルブ開閉の同期タイミングが取れなくなります。

規格の頭文字のS は火花点火機関(Spark Ignition Engine)の頭文字を 取ったものでガソリンエンジンオイルについての規格です。 Cは圧縮点火機関(Compression Ignition Engine)の頭文字で ディーゼルエンジンオイルについての規格です。近年省燃費、省資源性対応の為、新しいエンジン用により低粘度なFA-4 規格が追加されました。

3. ILSAC規格表示

ILSAC(International Lubricant Standardization and ApprovalCommittee :国際潤滑油標準化承認委員会)を略したもので ”イルザック”と読みます。最新規格はGF-6でAPI規格に加え、省燃費、省資源性に関する、より厳しい試験をクリアーしなくてはなりません。

4. その他の規格
4-1. ACEA規格
ACEA(欧州自動車工業会:Association des Constructeurs Europeens d’Automobiles)欧州のエンジンオイルの規格となります。APIと共通の試験もありますが、欧州製エンジンを使用したエンジン試験などが取り入れられています。ACEA規格は現在、エンジンの種類によって下記のようなクラスに分かれています。
4-2. JASO規格
自動車技術会が策定する規格で下記のような規格があります。
ガソリンエンジンオイル
【 GLV-1 】
API 規格では粘度設定のない0W-8, 0W-12といった低粘度品のために策定されました。 低粘度油に適した省燃費性試験を行っています。
ディーゼルエンジンオイル
【 DH-1 】
動弁系部品の摩耗防止、EGRの装着や噴射タイミングの遅延等による油中ススの増加に対応するピストンの清浄性の確保、高温下で使用される場合の酸化安定性向上、触媒対策の試験等を行っています。
【 DH-2(DH-2F) 】
DH-1で要求されているエンジン清浄性、磨耗防止性に加え、DPFの詰まりの原因となる燃焼残渣物(灰分)と、触媒性能を損なう懸念のある成分の低減などが求められます。 DH-2Fはさらに省燃費性試験を追加したものです。
【 DL-1 】
DPFを装着した小型ディーゼルエンジン車用の規格です。
【 DL-0 】
API CF-4規格は2008年に廃止されましたが、いまだ需要があるため、CF-4相当の規格として設定されました。
二輪車用2サイクルエンジンオイル

二輪車用2サイクルエンジンオイルは下記のようにFA~FDに分類されます。

【 FA 】
2サイクルエンジンにとって最低限の性能を有する
【 FB 】
FAに比べて特に潤滑性、清浄性に優れる
【 FC 】
FBに比べてさらに排気煙、排気系閉塞性に優れる(スモークレスタイプ)
【 FD 】
FCに比べてさらに清浄性に優れる(スモークレスタイプ)
二輪車用4サイクルエンジンオイル

クラッチ摩擦特性試験の結果によりMA、MA1、MA2、MBの4種類に分類されます。